© 双葉社

夫、カイショなし。妻、ノー天気。そんな二人のあったかくておかしくて切なくて心にしみる54のプチ物語。 「夕凪の街 桜の国」で手塚治虫文化賞新生賞、文化庁メディア芸術祭大賞を受賞したこうの史代が贈るハートフル・ショートコメディ。

長い道

| 双葉社(出版)

84

非常に良い

90件のレビュー
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長い道のレビューが0 件あります

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90件のネット上の評価があります

  • 100

    amazon

    「迅速で機知に富み、洞察力があり、古典的でさりげなく、洗練されていてエレガントである。コミックでありながらシーリアスであり、見え透いていながら名状しがたい。作り物めいているが現実的であり、不道徳でありながら意味深長な道徳性を持ち、ふざけたものでありながら、あわれを感じさせるものである」(モーツァルトの《コジ・ファン・トゥッテ》を評した文章より)全く違う作品ですが、こうのさんの『長い道』にも、この評があてはまる気がします。互いを求めず、密かに別な人を想いつつ、それでもなぜか離れず結ばれている、道と荘介という夫婦の不思議なお話。現実にはあり得ないような設定。しかしそれは逆説的ながら、この作品に人と人との繋がりについての真実の一端をあらわしているように思えます。なぜなら人と人との繋がりというものは、程度の差こそあれ、こういうものではないのかと私には思われるからです。大方は特別な愛情や宿命などという大それたものでなく、それこそ偶然と思えるようなごく小さな出来事によって結ばれ(あるいは離れ)ていくものではないでしょうか。作者のこうのさんは、この作品の要所で、そうした小さな出来事を、登場人物たちにとってかけがえのないものとして、一つ一つ丁寧に描き出し、読者はそれにはっとさせられます。それは作者の深い洞察力と繊細な筆致が、普段の私たちが見過ごしている日常の小さな出来事に、人と人とが生きる上での大切な真実を見いだし、それらに淡くしかしこの上なく美しい輝きをあたえ、それを通して、一見どうしようもない作中人物たちにも(そして私たちにも)、人としての崇高さと美しさが潜んでいることを教えてくれるからなのです。この美しさを見いだすことは、読む人にとって至福というべき体験をもたらしてくれることでしょう。異なる角度から見ると、まったく新しい発見がある、そんな驚くほど豊かで広がりのある作品でもあります。この本を手にした方たちは、ぜひその豊かさをじっくりと味わってください。

  • 100

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    しあわせ芝居をしながら不仕合わせに安堵する。黙々として、気持を総括することを恐れる道の在りようは、飄々と浮世離れしたキャラクターに拍車を掛けていく。微笑いながら「人類最後の日かと思いましたよ」と天然に言わせてしまう。あさっての方向を見るような彼女の心は歯を食いしばるように自らの内省を封じていったのではないか? ふとそんな気がします。過去が自分(道)を縛るように竹林どのが幸せを躊躇うことが若しあれば……その気がかりが自らの結婚の報告で贖われる気がしたのではないか。とすれば本末転倒の結婚になる。道に罪の意識があるとすれば共犯者にしてしまった荘介どのに対してだろう。互いにとって都合の良い場所に収まることができればよかったはずの結婚。夫を裏切り続ける妻は優しさをはぐらかし嘘をつく。「水鏡」という話の中で「やっぱり荘介どのは右利きのほうが落ち着きますね」と道は呟く。道には素直な本心なのだろう。ちゃらんぽらんな甲斐性無しの荘介の温かい本質に触れるたびに感じる痛みは否応なしに道を癒してもいく。そしてそれがまた苦しい。竹林どのとの再会を道が願ったことも荘介を裏切り続ける辛さからだったと私には思える。「わたしもシアワセになってもいいのですよね?」という道の言葉には一抹の寂寥もあったろうが、荘介との時間を真実に変えていける安堵と解放に満ちている。結婚したことを報せる竹林どのからの葉書を受け取った日、帰宅した荘介が道に言う。「なんかいいことでもあったのか? わかるよ。もう長いつき合いなんだから」しばらくの沈黙の後「ええ ありましたよ」と道は答えます。その「いいこと」って? 竹林どののこと? 違うでしょう。黙っていても自分の気持の変化に気づいてくれる。そういう荘介の優しさのことを「ええ ありましたよ」って道は言っているんですね。 その後またしてもオチがつくのですが…(笑)

  • 100

    amazon

     荘介は職についても長続きしないダメ男。それでいて女にはもてるので、次から次へと女性をとっかえひっかえしながら、その日を暮らしている。そんな彼のもとへ道という女性がいきなり転がり込んでくる。両方の親がさして深くも考えずに取り決めた縁談だという。荘介は、健気ではあるが地味な道をうっとうしく思い、夫婦の関係にはなろうとしない…。 失業中の夫との生活は経済的には極貧状態。その夫には常に女の影がちらつく。 それでも道は、アルバイトをしながら夫を懸命に支えて、笑顔を絶やさない。 なんとも出来た嫁です。その健気さにまず胸を打たれます。  しかし、やがて分かってくるのは、彼女が健気でも前向きでも、人生を手放しで肯定的に生きているわけでもないことです。 道がこんなダメ男のもとへやってきたのは、荘介が暮らす街に来たいと思うある理由があったから。 好きでもなければ会ったことすらない荘介と暮らし始めたのも、人生を悲観的に見つめる出来事が道のこれまでにあったから。 道は、肉体的には呼吸をしていても、心はどこかで硬く死んでしまっていたのかもしれません。 前に進むことをあきらめて、自分のシアワセを考えることすらやめてしまった彼女は、自分のそばにいるのはせいぜい荘介のような体たらくの男くらいだと諦観を抱いているようです。 ですから私にはこれは名もなき夫婦の心あたたまる物語ではなく、生きる希望をどこかで捨ててしまった女の痛ましい物語のような気がしてなりません。 そのことに気づかぬまま荘介が、わずかに道に心を寄せ始めたかにみえるエンディングには、小さな希望を見出さずにはいられません。しかし、果たして道は生きることに再び力を込めることがあるのか。 それはわかりませんが、そうであると少なくとも信じてみたいと思います。

  • 100

    amazon

    たまたま寄った本屋さんで、おすすめ漫画コーナーに置いてあったこのまんが。気の抜けた絵で、コーナーの一角でひとつだけ異彩を放っていた。思わず手にとってしまう。完全なジャケット買いだ。ページを開いて読んだととたん分かった。ああ、買ってよかったぁ、と。その本屋のセンスに感謝している。あらすじは・・・十難くらいかかえている典型ダメ男"荘介どの"(でも時折みせるやさしさや淋しさがたまらない)と、ある秘め事をかかえている、のんびりそうに見えて芯の強い女"道"(この名前がぴったり)の送る、何とでもない日常のお話。この二人、夫婦だけれど、お互い愛し合っているわけではない。ただ、夫婦という枠にはまって、一緒にいるだけだった。荘介どのからしてみれば、道は家政婦がわりみたいなもので、自分の好みとは全く違うから、当然夫婦生活もないし、いつでも他の女を追いかけているという始末。道はそれを知っているけれど、顔には不満も何も出さない。ただ、ゆったり、暮らしている。昔、愛した人の思い出を心の隅において・・・。夫婦のようで、夫婦ではない二人が繰り出す日常は、とてもふしぎだ。けれど、二人が、ほんのふとした瞬間、一線を越え心を通わせようとする時、読者は物語に目を見張り、とてもあたたかい気持ちになる。「愛鳥週間」のお話が特によろしい。荘介どのと道が道端で鳥を見つけて飼うお話。何だ、あの鳥は。えさをやるとベロベロ〜って舌を出すし、目がかわいくないし、のど元をなでてやると「うっとり・・・」てなるし。変な鳥を可愛がる二人。鳥の巣立ちのときの、哀愁じみた荘介どの。面白かったなあ。何度でも読んでしまう。買って、本当に得した、という一冊。こうのさんの本をこれから少しづつ集めていきたいなと思う。

  • 100

    amazon

    私の勝手な解釈なのでネタバレではありません。道さんは、竹林氏との結婚を周囲から大反対されます。反対された理由は、二人とは全く関係のないことだったのでしょう。こうのさんの別の物語では、原爆症患者の娘だからと根拠ないレッテルを貼られて結婚が破談になるエピソードがありました。竹林氏は周囲の反対になびかない強い意志を持った方のようです。しかし、道さんは竹林氏のことを思って自ら身を引く。道さんは、相手を深く傷つけたという自責と、それでも諦めきれない思いから竹林氏の幸せをひたすら祈っていた。竹林氏が自分の事から早く解放されるように、早々に結婚した道さん。相手は誰でもよくて、ただ、自分が結婚したと伝えられる事実が重要だった。竹林氏が別の方と幸せな結び付きを得た事を見届けて、「私も幸せになっていいのですね」と呟く道さん。道さんは空想好きです。貧困の中でもあれこれ空想する事だけで心が満たされる。だから、いつもぼんやりしているように見えたり、やらかしたりもします。そんな彼女は、常識溢れる人からは変人に見えるかもしれません。かたや壮介氏は、仕事は直ぐ首になるわ、女好きで家に帰ってこないわの、ろくでなしです。生きることが下手なんてきれいな言葉ではフォローできないろくでなし。ろくでなしですが、「自分の思いだけで形だけの結婚を望み、いつも空想して自分だけの世界にいる道さん」と結婚しながら、結果論ではあるけれど、道さんの心に土足で踏み込む事だけはしませんでした。結婚しながら結び付きがなかった二人ですが、生活している間にちょっぴりですがお互いへの思いが生まれてきたところで物語は終わります。

  • 40

    amazon

    酒に酔った親同士の言いなりに結婚したり離婚したり見合いしたり、そこまで親の言う通りに行動するキャラクターに違和感を感じます。昔の結婚はこういうのもあったのかもしれませんが…。最後の方は旦那も微妙に妻を好きになってきた気がするものの、結局は働き者の妻を利用したい面が見える。周りに反対されたらしい妻の元恋人の方が明らかに良さそう。妻の結婚理由が元恋人がいる街だから結婚相手も良い人かもとか、そんな、同じ街に住む人皆んな良い人な訳ないでしょう。旦那は浮気ばかりしていて、働くのもうまくいかないし、旦那は妻を俺の好みじゃないとか文句ばかり言うし、親の言いなりに結婚する必要も許可されたから離婚する必要もありません。自分で決めればいい。酒に酔った勢いで一回だけ関係(過ち?)はあるものの基本的に同居してるだけで夫婦の営みは無いし、何なのこの二人と思う。でも一緒に居続ける。ほのぼのニコニコしていて、私の受け取り方が悪いのかという気にさせられる。何度も読み返せる点は評価するけど読み返す度にイライラする。一瞬、大金持ちになるがお金を全部人に渡して貧乏に戻る。お金はある程度あった方がいいです。清貧でよく働いてよく笑い地味で従順な女性に対し、自立した女性はやたら気が強く派手で怒りっぽく男性に暴力を振るう描き方。お金を持つことも自分の意思を持つことも大事なことだと思います。

  • 100

    amazon

    主人公「荘介どの」の名前「老松荘介」は、老子と荘子からその名を取られているのでは、と気づいた時、この作品を見る目ががらりとかわりました。また、荘介の妻である道の旧姓は天堂で、「天堂道」という名前です。老子や荘子が説いた「天=道(タオ)」との関係があるのはおそらく間違いないでしょう。同じく、道の"昔の人"である「竹林賢二」も、道家で有名な竹林の七賢からでしょうし、荘介の学生時代の友人「丘本孔平」は孔子(本名は孔丘)からでしょうから、荘介に酷いことを言われるのもある意味で納得できてしまいます。老子の言葉に「大道廃れて仁義あり」と言うものがあります。「世の中が乱れているから、仁義という言葉が重要とされてしまうのだ」という意味ですが、この作品では夫婦のあり方や愛について、「現実に幸せではないから、夫婦の愛がことさらもてはやされている」と言われているような気がします。荘介と道の状況だけを見ればとても幸せとは言えませんし、普通なら憎みあってもおかしくない状況でありながらどこかほのぼのとしているのは、ここに描かれる生き方がどこか老荘的であるのと無縁ではないと思います。二人はお互いに愛情を表現したりは(ほとんど)しませんが、お互いを大切に思っている事は読者に確実に伝わってきます。何気ない、しかし本物の愛情を表現している稀有なマンガではないかと思います。

  • 40

    amazon

    残念ながら、現時点では私はこの作品に共感できませんでした。まず、この作品の舞台である「古き良き昭和」みたいなものに全くノスタルジーを感じない。まずしかったけど、あの頃は良かったみたいな感情が湧いて来ません。また、お金がなくてもこんな幸せが見つけられる、みたいなメッセージを感じてしまうのですが、そのメッセージが何か言い訳がましく見えてしまうのです。努力しない者の現状への開き直りに感じてしまいます。また、主人公の道のような不思議な女性はいいキャラだと思うのですが、あまりに不思議すぎて、現実離れしている気がします。こんなに簡単に結婚していいの?こんな目にあってもいいの?と思えます。だめ亭主、思いが届かない恋人に対して、マイペースにしているように見えますが、自分から行動を起こす意思がなく、別の道に目をつぶって現状に甘んじているように見えてしまいます。今、何かに向かって必死に努力している人には向かないのかも。この作品は。こんな不思議な心のキレイな人たちの関係っていいでしょう?というメッセージを押し付けられている気がして、不快になってしまいました。私の心が真っ黒で、すさんでいるからかもしれませんが、もう少し年を取って自分の人生を振り返るくらいになったら、また全く違う見方が出来るのかもしれないとも思います。

  • 100

    amazon

    斬新な笑いと開放感を含みながらも、「夫婦」という人間関係の不可解さを描ききった、ある意味恐ろしい作品だと最初は思った。だが、これを恐ろしいと見るのではなく、関係を繋いでいく積み重ねと見ると前向きな視点を得ることが出来る気もする。道さんは母親のようだ。夫の荘介はその子どもだ。(荘介の父親も、外出する先々でモノをくすねて来る幼さを持つ)。性行為も一度しかしていない。それもアクシデントのように。彼らが寄り添う時の道さんの反応は不自然なまでに純なものだ。道さんには本当に思いを寄せている男性がいる。どうやらその男性とは、お互いに深い傷を背負う恋愛だったようだ。その男性が幸せを見つけたとき、道さんも「自分も幸せになってもよいのですね」と相手に問うように、自分に言い聞かせる。まるで昔々の日本の夫婦関係のようだ。家制度が残っていた時代の。道さんの不思議さ、おとぼけぶりはそのような背景を無意識に喚起する。無邪気に浮遊する男のシェルターの役割を果たす道さん。その男の幸せが自分の幸せだと考える道さん。まるで「東京物語」の原節子のようだ。彼女が一人遠くを見つめる目は、余りにも気高い。まるでこの世の人とは思えない、そう、それは天女の如く、である。

  • 100

    amazon

     yukkiebeerさんのレビューがとても素晴らしいと思いました。この作品はユーモラスな日常だけでなく、同時に「生きることをあきらめた女」の再生を描いた物語だと思います。 中盤では、主人公(道)は以前の婚約相手(竹林)を不幸にしてしまったという罪悪感を抱いて生きていたということが明らかになります。ダメ男(荘介)と結婚することさえ受け入れてしまい、それ以降のユーモラスな結婚生活(?)がこの作品のメインテーマとなります。しかし道にとっては結婚生活などではなく、望まない男と暮らすという「罰」を自分自身に科していたのだと思います。そしてその罪悪感の根源が消えていくのを見るたびに、道は本当の笑顔を見せます。 次作にあたる「夕凪の街」の主人公は、自分だけ生き延びてしまったという罪悪感に苦しみ、幸せになることを拒絶します。希望を失った主人公が、それでも再び幸せになることを許される・・・これは「長い道」と「夕凪の街」で共通するテーマです。「わたしもシアワセになってもいいのですよね?」「うちはこの世におってもええんじゃと教えてください」・・・メインテーマこそ全く違いますが、「長い道」は「夕凪の街」の原型となったのではないかと感じます。

  • 80

    sakuhindb

    奇妙な夫婦の漫画。浮気にギャンブルにとしょうもなさげな男に、親同士が決めたのが原因でちょいズレた女が嫁いできたと。男のダメなところを描きつつ、女のほのぼのさで修羅場どころか和んでしまうところが面白いだけの漫画・・・と思いきや。生活を描いているから、その人の生き方を見れる。そして時は流れていって、人生の一端を見ることが出来る。今回作中で描いていたのは1年くらいかもしれないが、正直感服した。奇妙な夫婦生活は、「道」を経て、いつしか二人らしい夫婦生活になっていくんだろうなと思える人生の「長い道」を感じさせてくれた。評価は「とても良い」で。 ・・【良い点】作中はユーモアがちりばめられていて、単純に読んでて楽しい作品でもある。というか、人生にユーモアは大切だなぁと思い知らされるかもしれない。荘介どのはとんでもない男だが、何気にカッコいいところもある。自分に正直だし、何気に女にもてている(爆そういう意味では、嫁のみちも正直に生きているところがある。そこら辺も読んでいて感化されるところかな・・人によるかもしれないが。 なにはともあれ、良い作品には違いないので、是非に読んで欲しい作品だすね。

  • 100

    amazon

     主人公兼旦那の「荘介どの」とヒロインで妻の「道」が織りなす日常生活を数ページごとにまとめた短編集。まるで隣のアパートの一室を見ているようなほんわかした雰囲気があります。風の流れが一瞬で解るこうの先生の独特のタッチは健在です。そういや、ベランダに半身を乗せて空を眺めながら風を感じるなんて何年もやってないなと忙しない現代にはっとする作品です。内容は壮介どのは文無しで女遊びにうつつを抜かしていても、それを全て知っていながら小遣いを渡し暖かく見送り笑顔で迎え入れる道には母艦を髣髴とさせる心の広さを感じると同時に、彼女の過去に愛した人への罪の意識が見え隠れする隙間風のようなひんやりとする中にほのぼのがあります。まるで「12月にしては暖かい。」ような心地よさがあります。最大の見所としては、それぞれが愛情を明後日の方向に向けて投げかけていますが後半になるにつれて明後日から明日、今日、今、壮介と道へと向けられていく過程には春を感じる風が流れています。貧乏は嫌だけどきっとどこかでこんな生活を送れたら楽しいのだろうなと思い馳せる私の中で近くて遠い一人でも多くの人に見て欲しい素敵な作品です。

  • 100

    amazon

    あんまりカバーの絵が印象的なもので、つい買ってしまいました。そしたらめちゃくちゃ当たりでした!すげー良かったです。昨今、とくに少年誌、青年誌の腐れマンガの数々にうんざりしてましたが、『本物』のマンガを書く人、ちゃんといるじゃないの!「ほのぼの」とか「コミカル」とか言いつつ、実はものすごく深くて鋭いテーマを突きつけられた気がしてます。とても基本的で、だからこそ難しい「夫婦」「男と女の暮らし」の妙が、笑いの中に隠されているようなマンガです。「暮らしをわかちあう」というのがどういうことか、誰かを愛しいと思うのはどんな時か、ふっと思い出させてくれます。男としては、女にだらしない夫の荘介が徐々にヒロイン・道に惹かれていく過程がいじらしくて好きです。夫婦なのに、恋してるんだよ。すごいよね。そして、道の「女」の部分が垣間見れる雨の日のエピソード『けんか傘』。ぞくぞくするくらい、いいです。一話ごとにいろんな実験的なことをやってるので一冊の本としての統一感はイマイチ(というか全然)ないですが、そんなことをものともしない絵の素晴らしさと演出と素朴な台詞に心打たれました。

  • 100

    amazon

    不思議な物語です。喜劇ともホラーとも読めます。いろいろな表現の遊び(表現手法,と呼ぶより,作者は喜んでくれるのではないか)も満載で楽しめます。夫「荘介」は自分の都合のみ考え,せつな的に行動しているだけ。甲斐性はおろか,責任感すらありません。妻「道」は,そこまで露骨ではありませんが,けなげでも献身的でもありません。夫である「荘介殿」に尽くしてなど居ません。自分のやりたいことをやりたいだけ,ある種の諦念をもってやっているだけ。話が進むにつれ,徐々にお互いを大切に思い始める気配もあるのですが・・・ところで,この夫婦を世間一般の,あるいは,勇気を持って(笑)自分たちと比べてみると,あれれ?「荘介」と「道」の夫婦のほうが,幸せそうに見えたりするのは私だけ??この二人をうらやましく思うのは私だけ???喜劇度・ホラー度はどっちもどっちかも。そんなわけで,読んでみましょうか(笑)。ジョークが「お寒い」のとは別次元の怖さ・ゾクゾクする感じが楽しめますよ?

  • 100

    amazon

    「ほんわかした作品」、そんな感想ではこの作品の本質も良さも伝えられない、そう感じてしまう。全編に漂うゆるやかな雰囲気、それでいてとげとげしさであったり凛とした強さであったりも含んでいるから。それはこうの史代の全作品で味わえる快楽。“あちら側”(フィクション)に留まることなく、“こちら側”(現実)に還ってくるからこその心地良さ。そして、道は理想の女性だ。ぐっと来る。尊敬と同時に親愛を抱ける女性。何も考えても感じてもいないように、全てを許し、受け入れ、笑って日々を過ごす彼女。いわゆる「癒し系」なのだが、多くのドラマやマンガに出てくるような浅い存在ではない。お姉さんのように見せていて、母のように強く辛辣だ。だからこそ、「最後は笑って過ごしましょう」というメッセージが心に響き、それでいて、近くでいるようで遠くにいると感じさせる彼女の存在に、淋しささえも浮かんでくる。彼女が側にいてくれたなら、きっと言葉にできない暖かみを感じつつ、強く生きられる。

  • 100

    amazon

    こうの史代の代表作は間違えなく『夕凪の街 桜の国』だと思いますが、こうの先生の最高傑作は本作『長い道』ではないでしょうか?この作品の手法はとても面白く、四コマ、無声漫画、クロスワード、墨絵、絵文字など遊びが多くちりばめられており、その表現に於いては読者が飽きる暇(いとま)を与えて貰えない程こういった手法を間に入れ来てとても巧みだと思います(使い古しな技なので姑息と思われる方も居るかも知れませんが…)あと作品の中に出て来る荘介は最低な男かもしれませんが道の心の闇を消せたのは彼だから成せる至難の業でしょう全1巻なのにここまで本当に長い道のりでした。しかし本当の長い道は最終話で道が見た荘介とのこれからの一生の事なんでしょうか…?レビューは沢山ありますが夕凪〜のおかげである意味こうの作品の中では日蔭な作品、俺はキャラクターもストーリーも大好き名作ですね!

  • 80

    manga_review

    親によって突然結婚させられた夫婦の生活を描いた作品。
    はじめ読んだ時は「こんないい奥さんがいるのにどうして!?」と荘介のダメ男っぷりに共感できずちょっと微妙に思ったのですが、読み返していって「こんな二人が作る奇妙なバランスが良い」って思えました。

    一話あたりが3Pちょいくらいで短いのですが、話の中身の自由度はこうのさんの作品の中で一番かもしれません。
    突然大金持ちになってしまったり(次の話ではまた貧乏になる)、さつまいもが成長しすぎてマンションから追い出されたりと。
    この「なんでもあり」な雰囲気が合うか合わないかは好みによるでしょうが・・あとがきでも書いてましたが作者が自由に楽しく描いてる雰囲気が伝わりました。

    余談ですが、こうのさんの作品のひとつである「こっこさん」と少しクロスオーバーしている舞台設定となってます。

  • 100

    amazon

     Amazonのレビューが良かったので購入しましたが本当に購入して良かった!!と思いました。夫婦の日常を3〜4ページで連作していくショートショートの漫画になります。いつもニコニコしておっとりとした道さんと女性にだらしがないけど女性に優しい荘介さん。季節の移り変わりと共に変わっていくふたりの心。忘れかけていたいつかの日本の姿も見えます。突然の雨に傘を半分こ、停電で間違えて他の家へ、梅酒作りで酔っぱらい、七夕で願い事・・・高野文子さんの「るきさん」魚喃キリコさんの「ハルチン」南Q太さんの「オリベ」みたいな感じかと思いましたがこれらは友達コンビの日常。本作は夫婦であることの良さが味わえます。夫婦の距離ってこれぐらいが理想なのかな?ほんと、素晴らしい作品で久々に感激しました。 

  • 100

    amazon

    女性のお尻を追い回す甲斐性なしの夫、荘介親の酔った勢いで結婚を決められ、なぜかそれを受け入れてしまった妻、道二人の関係を言葉にするのなら、まるで「夫婦のような夫婦」。そんな二人の1話4,5ページで表される、ちょっとおかしく、ちょっと切ない54のストーリーが収められています。描かれる二人の日常を通してノスタルジックな気分にさせられ、全ての話を読み終わった後に、自分の中に眠る、まるで今までずっと忘れていたような感情を呼び起こされます。緻密さとはまた違う、絵柄、決して世界観を壊さない背景描写に作者の力量を感じずにはいられません。友人に勧められるまで、この作品をまったく知りえなかった自分のアンテナの狭さに思わず反省です。文句なしでお勧めします。

  • 80

    amazon

    筆者のマンガを最初に見たのは雑誌に掲載されていた「ぴっぴらノート」だった。殆ど気にせず読み飛ばした。それから有名になった「夕凪の街・・」で、これは重すぎて(私にとっても、筆者にとっても)その評判とは裏腹に、完成度を評価しにくいものだった。そしてこの「長い道」。これは良かった。とんでもない経緯で結婚することになった若い二人の、一種別世界的なラブ?ストーリーである。二人の行動は現実的には了解不可能だが、薄物をとおして透けて見えるような理解ならできる。そこがいい。これを現実に即して考えてしまうと、「何でだ」になってしまうけれど・・ こういうセンスを、筆者はもっていたのかと改めて認識した。こういうの、もっと描いてください。お願い。

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日常
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